静岡大学総合防災センター
地域の「防災ホームドクター」
 
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 ある火山が将来噴火した場合に生じる可能性のある災害の内容や、その規模、影響が及ぶ範囲、災害対策などを地図上に表したものを「火山防災マップ(ハザードマップ)」といいます。
 長崎県の雲仙普賢岳や伊豆七島の三宅島などの例を見てもわかるように、火山が噴火すると、その規模によっては多くの人命が失われたり、長期間にわたって広い範囲に深刻な被害が及んだりすることがあります。
 火山の噴火そのものを防ぐことはできませんが、噴火の規模や被害を予測して的確に避難誘導を行ったり、さまざまな備えをしたりすることで、被害を少なくすることは可能です。そのためには、過去の噴火実績から被災範囲を予測するハザードマップの整備が欠かせません。
 また住民の側でも、ハザードマップを通じて日頃から防災情報を把握しておけば、いざ噴火となっても、行政の発表や呼びかけの内容をよく理解することができ、すばやく落ち着いて行動することができます。
 国では平成4年(1992年)に「火山噴火災害危険区域予測図作成指針」を策定し、この中で「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」および「活動的火山及び潜在的に爆発活力を有する火山」とされる29火山から優先して、ハザードマップを整備すべきであると指摘しています。その後、有珠山や三宅島の噴火を経験してハザードマップの意義が理解されるようになり、各地でマップの制作が進められました。現在すでに約30の火山について、公的機関が作成したハザードマップが刊行されています。


 富士山は国内の他の火山に比べてすそ野が広いため、いったん噴火すると広い範囲に多大な被害が及ぶおそれがあります。また、日本の交通の動脈とも言える東海道が噴火の影響で寸断されれば、経済に及ぼす影響もはかりしれません。
 しかし富士山はもう300年も噴火していないため、緊急にハザードマップをつくる必要を感じている人は決して多くはなかったのです。
ところが、平成12年(2000年)10月から翌年5月にかけて富士山地下での低周波地震が急増し、また同じころ有珠山や三宅島の噴火が注目を浴びたことなどから、富士山についてもハザードマップ作成の気運がにわかに高まりました。
 平成13年(2001年)に、国と富士山周辺の15の自治体によって富士山火山防災協議会が設立され、同時に富士山ハザードマップ検討委員会が作業を開始しました。これは、広域的な災害を視野に入れた、国レベルでの初めてのハザードマップづくりへの取り組みでした。
 検討委員会では宝永噴火級の規模の噴火まで想定し、過去の噴火履歴や最近の研究成果、噴火のシミュレーションや被害想定など多方面からの検討を行いました。その結果、平成16年、最終報告書がまとめられ、あわせて富士山火山防災マップ試作版が完成しました。この試作版にもとづき、山麓のおもな市町村では住民配布用のハザードマップが作成されています。



 
  

 この地図では、火口ができる可能性のある範囲や、溶岩流・噴石・火砕流・泥流が及ぶ可能性のある範囲などを示しています。この図によって、噴火が起きたときに、すぐに避難する必要のある範囲や、避難に時間の余裕がある範囲などがわかります。 国では平成4年(1992年)に「火山噴火災害危険区域予測図作成指針」を策定し、この中で「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」および「活動的火山及び潜在的に爆発活力を有する火山」とされる29火山から優先して、ハザードマップを整備すべきであると指摘しています。その後、有珠山や三宅島の噴火を経験してハザードマップの意義が理解されるようになり、各地でマップの制作が進められました。現在すでに約30の火山について、公的機関が作成したハザードマップが刊行されています。


 この地図では、江戸時代の宝永噴火(1707年)と同種類・同程度の規模の噴火があった場合を想定し、季節ごとの風の向きや強さを考慮に入れて、厚さ2?以上の降灰の可能性のある範囲を示しています。これによって、火山灰による災害の範囲を予測し、対策を立案することができます。


 
 火山のハザードマップを作成する一番の目的は、火山が噴火した場合の周辺地域の危険がどれくらいになるのかを地図で示すことです。これによって、万一の際に住民の生命や財産を守るための事前の対策・準備がおこなうことが可能になります。
 しかし、ハザードマップの役割は、それだけではありません。火山の噴火というのはそうたびたび起こる現象ではありませんが、そうした「噴火のない」ときにもハザードマップはさまざまな場で活用することができるのです。


 火山ハザードマップは、過去の噴火履歴データに基づいて制作された、火山山麓の「土地カルテ」ともいえるものです。その土地の長期的な危険度が把握できるため、土地利用計画や町づくりの参考にすることができます。たとえば、噴火の危険がない間は観光・産業・居住へ土地を最大限に利用する一方で、万一の災害に備えて、危険度の高い地域には病院や学校はつくらないなどの配慮が可能になります。


 火山ハザードマップの多くは、火山がつくった郷土の地形、火山のめぐみを受けて営まれてきた郷土の暮らしなど、火山にまつわる歴史や伝承など、地域と火山との関わりについても記述しています。このため、ハザードマップは郷土学習の資料として大変優れています。火山噴火に対する防災教育の教材となるのはもちろんです。


 火山はいったん噴火すると、地域に大きな被害をもたらしますが、長い目で見れば、広くなだらかで利用価値の高い土地、美しい景観、温泉など、人々に大きな恵みをもたらします。このような恵みを観光資源として活用する上で、ハザードマップはその基礎データとして役立ちます。マップを「火山観光地図」として仕立て直し、観光客向けに配布することなども考えられます。




 

 北海道のほぼ中央にある十勝岳は過去に何度か噴火を繰り返し、なかでも大正15年(1926年)の大正噴火の際には大きな泥流災害が発生しています。昭和60年(1985年)に再び火山活動が活発となったため、翌年、上富良野町ではイラストを多用したわかりやすいハザードマップを作成し、住民に配布しました。観光への配慮からためらっていた美瑛町も1年遅れて配布に踏み切りました。
 昭和63年(1988年)の噴火にともなって火砕流が発生し、約300人に避難命令が出されましたが、ハザードマップによって避難場所や避難のタイミングを適切に判断することができ、人的被害をゼロに抑えることができました。また、緊急時の心構えが住民にも浸透しました。
 同じ北海道の有珠山でも、ハザードマップが効果を発揮しました。
 有珠山では昭和52年(1977年)の噴火の直後からハザードマップの必要性が学者によって説かれていましたが、行政の理解が得られず、なかなか実現することができませんでした。しかし、雲仙普賢岳の噴火を契機としてようやく平成7年(1995年)にハザードマップが完成。平成12年(2000年)に有珠山が再び噴火したときには、ハザードマップに基づいて、避難区域の設定や解除などをスムーズに行うことができたのです。



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