火山爆発のダイナミックス〔計画研究A05班〕:研究成果の概要
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 2003年度の研究成果の概要 
(1)高速全自動火山噴出物分析装置の導入によって、膨大な資料の迅速な全岩化学組成分析が可能となった。この解析の結果、樽前山の歴史時代の噴出物が示す組成変化に対して、中川は、2種類のマグマ混合の変遷が深部成層マグマ溜りを規定したと考えた。現在は、デイサイト〜安山岩質マグマは枯渇した状態にあり、次期噴火予測の原点が明らかにされたことになる。
(2)IUGG総会やハワイでの国際会議の場で、ハザードマップの活用・次世代の減災文化育成や土地利用などまで踏み込んだ、減災のための基礎科学について交流を図った。宇井・岡田の協力による英語版有珠山防災ビデオは、高い評価を得た。有珠山副読本計画、火山教育、次世代育成支援なども、国際的な強い関心事となっている。
(3)多方面からハザードマップの研究がなされた。山村らはGISシステムを用い住民活用型マップ分析を実施し、火山災害環境と社会災害環境の調和政策を念頭に、モデル規範適用理論による考察を行なった。小山らは、準備中の富士山のハザードマップについて、地元自治体の防災関係者を対象に意識調査分析を行い、長期間噴火がなかった地域での、減災活用における課題を明らかにした。
(4)噴火災害時の危機管理については、岡田等は、2000年有珠山噴火の前兆期と噴火対応初期について、報道ビデオなどをもとに、危機管理時系列の実態を明らかにした。特に火砕流発生の認知とその情報提供の詳細な実態は興味深い。また、1910年有珠山噴火の危機対応時系列表が完成し、避難解除の課題等が明らかになった。小山らは、火山災害危機管理情報処理システムを構築し、本研究メンバーによる最近の研究成果をwebで活用するシステムの運用を開始している。
(5)吉川は、三宅島噴火の予知連議事録の解析により、集団浅慮など組織心理学からみた危機管理の課題を論じた。今後の比較研究が注目される。
 以上の簡単な研究成果に加えて、本研究班のメンバーの果たした社会的な研究成果とみなせる若干の事項について、以下に簡単に追加記述することとする。
 有珠山噴火の被災地を訪れた天皇・皇后両陛下は、2000年7月1日に虻田町役場の総合防災対策室を訪れた。高橋知事並びに長崎虻田町長、山中壮瞥町長、菊谷伊達市長など列席の場で、本研究代表者であり、当時火山噴火予知連絡会有珠山部会長であった岡田弘が、有珠山噴火の説明と防災ビデオの解説を約15分間説明申し上げる機会があった。
 両陛下は、噴火当時からテレビなどの情報で現地の様子を深く御憂慮されていたことや、火山噴火や災害軽減に関する深いご見識が伺えたことは、本計画研究を進めているメンバーにとっても暖かい励ましとなった。
 両陛下は、2003年1月のアフリカのニイラゴンゴ山噴火で、ゴマ市を埋めた溶岩流噴火災害もよくご存知で、その噴火に先駆けて現地の火山学者が観測データに基づき社会へ事前に警告をだし、世界へ観測支援を要請していたことも話題になった。
 その研究者の1人であるワフラ氏が札幌で開催中のIUGG総会に出席していることをお知りになり、翌日IUGG総会のパーティの機会に、浜口博之東北大教授とともに両陛下にご紹介する機会を得た。
 その後道庁を通じて、有珠山の防災ビデオ2巻が両陛下のもとに届けられた。ビデオのうち1本目は岡田解説による虻田町火山科学館のものであり、もう一本は、本研究メンバーの宇井忠英・岡田弘が新たに企画・製作・監修協力を行い、2004年IUGG総会に合わせて完成させたものである。
 なお、このビデオは、子供版や英訳版も作成されており、英語版はIUGGの有珠山巡検などでも紹介された。また、ハワイの国際会議などを通じて、世界の主な火山研究機関に提供されている。
 伊達市防災センターの展示場では、ハワイ火山観測所職員一同がこのビデオを視聴したこと、素晴らしい内容で我々もそれを参考に取り組まなければならないという、ハワイ火山観測所長であるスワンソン博士の言葉が紹介されている。
 なお、2000年有珠山噴火と噴火後の安全なまちづくりに対する功績が認められ、菊谷秀吉伊達市長より、2003年11月7日にA05班メンバーの宇井忠英、岡田弘に対し感謝状が贈呈されている。
 
 〜 本研究メンバーの協力による主な火山防災ビデオ・出版物など 〜
(1)宇井忠英・岡田弘(監修)、2003
 「有珠山とともに・・・火山との共生をめざして」、防災ビデオ(VHS,29分)、有珠火山防災会議協議会・HBCフレックス.
(2)Ui, T. and Okada, H. (editors), 2003
 “Living with Usu Volcano --- Toward Safer Coexistence with Active Volcano.” VHS Video, 29min, Usu Volcano Disaster Prevention Council/HBC Flex Co.
(3)宇井忠英・岡田弘(監修)、2003
 「なぜ・ナニ有珠山・・・火山のことをもっと知ろう!」、VHSビデオ、18分、有珠火山防災会議協議会・HBCフレックス.
(4)宇井忠英(監修)、2003
 「有珠山は生きている〜過去・現在・そして未来に」、VHSビデオ、12分、伊達市消防・防災センター(乃村工藝社).(岡田弘一部協力)
(5)勝井義雄・宇井忠英・岡田弘(監修)、2003
 「有珠山地区 防災ガイドブック・・新たなる備えのために」、伊達市・虻田町・壮瞥町・豊浦町・洞爺村・国際航業梶A27p.
(6)岡田弘(監修)、2003
 「2000年有珠山噴火・・その記録と教訓」、物語虻田町史別巻(虻田町史編集委員会)、688p.(勝井義雄、宇井忠英、三松三朗協力)
(7)小山眞人(監修中)、2004予定
 富士山のハザードマップ.内閣府・地元自治体など.富士山ハザードマップ検討委員会委員として参加.
 
 〜 本研究メンバーが実施した主な防災啓発普及講演など 〜
 特定領域研究「火山爆発のダイナミックス」の中では、A05研究班は、防災啓発普及講演等に携わる機会が特に多く、その経過などが分かる資料整理が必要と思われる。
 しかしながら、現時点ではそのような情報を十分詳しく把握している状態にはなく、次年度報告書までにまとめて報告したいと考えている。過去に遡って資料を総合的に整理し報告する必要がある。ここでは、2003年度に行なわれた、ごく一部の、特に重要な社会還元に関する部分について記述するに留める。
 
(1)「死都日本シンポジウム」の企画開催.
 主催:「K作戦」実行委員会、2003年5月25日、講談社ホール.小山眞人が中心的な企画実行委員として参加.メンバーからは、小山眞人、宇井忠英、吉川肇子、および研究協力者の林信太郎,鎌田浩毅が講演、岡田弘他が司会.東京で開催される火山関連の集会としては画期的な約400名の参加があり、マスコミも注目して新聞やテレビで報道した。これに先立ち、インターネットで小山眞人他が、掲示板やホームページなどで議論を続けていたことも重要な基礎だったと思われる。
(2)月刊地球2003年11月号「総特集:大規模カルデラ噴火―そのリスクと日本社会」(海洋出版)の企画・出版.小山眞人が企画編集に参加。メンバーの、小山眞人、宇井忠英、吉川肇子、岡田弘、および研究協力者の林信太郎、鎌田浩樹が小文を寄せている。
(3)「第4回地震火山こどもサマースクール
 ―活火山富士のひみつ」、主催:日本火山学会,日本地震学会,静岡県(2003年8月2〜3日).小山眞人が企画実行に参加.
(4)住民・学童対象の火山の意識調査およびハザードマップの読み取り実験(村越、小山,林)富士宮市の中学校生徒と静岡大学の学生を対象.
(5)有珠火山防災教育副読本小学生版「火の山の響き」、有珠火山防災教育副読本作成検討会編(北海道地域総合振興機構).本研究メンバーの宇井忠英が作成委員会座長として、岡田弘がアドバイザーとして参加.中学生版は現在準備中.
 これがモデルとなり、焼岳でやはり小学生向けの火山防災副読本、「活火山焼岳と、私たちの暮らし。」(44p、焼岳火山砂防副読本作成検討委員会三宅康幸他、上宝村・国土交通省北陸地方整備局神通川水系砂防事務所)が作成された.本研究メンバーの宇井忠英がアドバイザーとして、岡田弘が協力者として参加した.
(6)有珠山噴火4周年記念事業関係.2004年3月30〜31日に有珠山山麓で、連続6回の子供達や住民・行政向けの火山防災関連イベントが企画されている。子供向けのものとしては、「春休みキッズスクール」で、虻田町・壮瞥町・伊達市の3箇所で開催。指導には本研究メンバーの宇井忠英・岡田弘、協力者の林信太郎が参加する。
 また、住民の方々と専門家がともに学ぶ「火山と砂防を学ぶ会」が、壮瞥町公民館(30日)と伊達市防災センター(31日)で実施予定である。講師はメンバーの林信太郎、宇井忠英と砂防の新谷融氏、司会は岡田である。住民と専門家による噴火遺構の現地調査も企画されている。
 2003年度のまとめと今後の課題 
 2003年度は、本研究が2年目に入ったこともあり、重要な機器やシステム構築などの研究基盤が固められたこともあり、充実した解析や研究段階に入った。年度末のシンポジウムには16編の研究発表があり、平成15年度研究成果報告書には27編の研究報告が寄せられている。
 研究内容は一見して確かに多岐にわたっているように見える。しかしながら、火山噴火の長期予測と災害軽減のための基礎科学、という2本柱の研究の進め方としては、それぞれ極めてオーソドックスな道筋を辿っていると考える。
 噴出物の詳細な全岩分析によるマグマシステムの時間的変遷については、次に爆発的噴火をするとしたら個々の火山でどのような違いが考えられるのか、どうこたえるか之基礎を与える。
 樽前山・駒ケ岳に代表される大規模軽石噴火を繰り返す火山は、それぞれどんなマグマシステムの時間変遷過程にあるのか?、三宅島のマグマシステムはどんな変遷過程にあって、2000年噴火でどうなったのか?、有珠山は何時まで20-30年の短い時間間隔で爆発的噴火と溶岩ドーム生成を繰り返すのか?、これ等の設問に正確に答えることは容易ではない。
 しかしながら、中川等による深部の複数のマグマ系によるマグマミキシング過程の特徴が今後更なる解明が進むならば、従来の噴火経験に基づくあいまいな長期予測に代わって、物理化学過程を考慮した予測に徐々に踏み込んでいく展望を築くことになると考える。
 災害軽減の基礎科学においては、過去の噴火時の実態に即した解析がどうしても必要になるため、多量のデータファイルや資料の収集解析が基礎とならざるを得ない。2003年度までの研究で、今まで世界のどこにもなかった種類の、この様な実態解明で可能な資料収集が進み、一部解析も進んでいる。
 ハザードマップについても、過去の多くの研究がそうであったように、災害直後にアンケートを回して集計するだけのアリバイ的な調査から、一歩進んだ実態のある調査研究に踏み込み始めたといえるのではなかろうか。
 災害時の危機管理の問題は、しばしば建前の点検に終始することが多いが、2000年の有珠山や三宅島噴火の当事者をメンバーとしている本研究班では、実態に踏み込んだ解析が今後も進めることが可能である。また、1986年伊豆大島噴火や1983年三宅島噴火、1988年十勝岳噴火や1977年有珠山噴火など、比較研究すべき重要な対象が幾つかある。
 外国の事例研究を進めているメンバーとの交流は、平成16年度に本研究による国際ワークショップで更に充実したものとなることが期待される。特に、セントヘレンズ山、ネバドデルルイス山、ピナツボ山やマヨン山などの爆発的噴火における科学者と社会との関係などは重要である。防災文化の構築に向けた次世代育成における課題も欠かせない。
 火山爆発のシンボル的現象である火砕流や火砕サージの噴出メカニズムやその観測手法の課題と、A05班による減災の基礎科学の研究展開は、車の両輪の関係にある。平成16年度には、今まで以上にA01〜A04班との密接な協力関係を築いていく必要があろう。
 2002年度の研究成果の概要 
 中〜長期的な火山噴火予知手法の確立においては、中川は、噴出物の詳細な解析や噴火史の構築により、活火山に新たに選定された利尻火山と2000年噴火における爆発的噴火とカルデラ陥没、更に大量の火山ガスの放出が継続している三宅島を対象に研究を進めた。長期的な火山体発達史を地下のマグマ供給系の時間的な変遷を解明し、それぞれの段階におけるマグマ供給形のモデルを構築することにより、マグマの組成変化がそれぞれの段階におけるマグマ混合の結果から一定のシナリオに沿って発展していることを示した。
 また、20世紀最大級の火砕流が発生した駒ケ岳では、予備的な研究であるが、同様の手法が極めて有力であることが解明されつつある(吉本・中川)。これらの結果は、減災への研究と共に、3月に北海道大学で開催されたシンポジウムで、A05班メンバーによる6件の研究発表で紹介された。このシンポジウムでは、地元行政や、国や道の行政関係者も多く参加し、54年ぶりに小噴火活動を再開した駒ケ岳におけるプリニー式噴火の噴火予測と災害軽減への関心の強さを示した。
 過去の主な火山噴火と災害対応に関する時系列データや各種映像資料の収集・デジタル化については、手分けして取り組んだ結果かなりの素材を準備できるまでに至っている(岡田、宇井)。特に2000年有珠山噴火、および駒ケ岳の1996年小噴火以降についての写真資料につぃては、主要な部分の素材はほぼ完成し、今後公開に向けての選択や小解説・インデックスの整理に取り掛かることができる状態に達した。
 また、時系列データについては、2000年有珠山噴火に至る長期的な時系列データの暫定的なとりまとめと、1910年噴火に関する詳細な時系列データなどが構築されつつある。成果の一部は、既に発表されている。更に、共同研究者の中橋は1986年伊豆大島噴火について、科学者と行政判断の詳細な時系列データを非公開資料やインタビューなども含めて構築し、ゲーミングシュミレーションという手法で、全島避難に至った経緯と、他の行政判断が可能だったかという問題点を学生集団をシミュレーターとして検討評価した。
 岡田は、有珠山でハザードマップ拒絶から活用へ至った経過を、科学者と行政・住民の視点で、映像資料をふんだんに取り入れた解析を行なった。取りまとめられた成果の一部は、大学における講義で活用され、次代を担う学生の目で見た、1977年当時の科学者と社会の関係への意見や提言がまとめられた。その成果の一部は、本年度の総合報告書に、「北大生は1977年噴火で避難を拒んだ観光業者の言い分をどう評価したか」および、「有珠山のハザードマップ・・拒絶から活用への虻田町長による舵取りを巡る北大生の意見と感想」としてまとめられた。
 1977年有珠山噴火から25周年に当たることもあり、当時の科学的資料や映像のとりまとめと解析を手がけ始めた。森は、地殻変動の時系列的な観測結果と、そこでどのような地盤変動被害が対応したかについて解析を行なった。本研究の中で、過去4回の活動まで視野に今後の研究を進める予定である。2000年噴火を迎えて、このような科学的知見が地元の行政や住民レベルまでの理解が得られるようになった意味は大きい。
 1977年噴火については、活動直後の取りまとめしかなく、全体の活動を記録として残すための膨大な資料の収集や活用を目指した取り組みはいまだなされていない。本研究では、爆発的噴火で重要な役割を果たした有珠山の4回の噴火について、科学者は減災科学でどう対応し、どんな問題点があったかについて、総合的にまとめ、その資料解析により次期噴火、或いは他の火山噴火での災害軽減科学の構築を目指す。1977年の噴火や北海道の火山災害軽減で活躍されてきた勝井義雄・清野政明・小池省二氏らに依頼し、当時の噴火資料や映像資料の整理を、A05班の公開シンポジウムを契機に進めた。今後印刷物として取りまとめる予定である。
 小山は、火山災害危機管理支援サーバーの立ち上げのための準備作業を進め、基本設計を進めると共に、科学的災害情報の伝達問題の解析にむけて、文献調査や社会学的調査を進めた。結果の一部は論文や報告書の他に、火山分野ではきわめて充実していると評価されているホームページなどでも公表されている。次年度初めには、科学小説「死都日本」シンポジウムを中心になって企画しており、A05班のメンバー4名も災害軽減科学との関連で参加し議論を行なう予定である。研究者協力者の林は、教育現場における災害や減災科学の役割やその実態の解析を進めた。
 吉川は、災害情報を出すに当たって、理学者や行政が安易にパニックを恐れすぎており、社会心理学の基本的認識と遊離している問題があることなどを、明らかにした。災害時の人々の行動傾向や必要なコミニュケーション技術、更に危機における専門家の意思決定、低頻度大災害のリスク認知問題などについて、社会心理学からの知見を基に、住民参加型のリスク管理のあり方を論じた。12月の公開シンポジウムでは、北海道内各地の行政の方々の参加もあり、それらの参加者からは、災害やリスク管理、社会学的切り口までの今までなかったようなとても面白い、目のうろこが落ちたような、シンポジウムだったという評価が寄せられた。
 山村は、GSI・GPS携帯モバイルを用いた住民活用型のハザードマップ分析に関する研究を進め、分担者の押谷が計画している住民意識アンケート調査と連携して、今後の次世代の多面的な情報を盛り込んだハザードマップのあり方を論じ、ハザードマップの新しい作成手法を検討した。GISで重要となる属性データや住民アンケートの基本調査内容についての立案はほぼ終了している。
 2002年度のまとめと今後の課題 
 計画の初年度であるため、他の班との連携がまだ十分ではなく、特に爆発的噴火のメカニズムの解明における火砕流や火砕サージについての研究成果を減災研究にどのように取り込んでいけばよいのか、明確になっていない面がある。このため、3月の総合シンポジウムや成果報告書を基礎に今後の研究においては、他の班との連携、すなわち最先端の手法で解明されつつあるメカニズムの理解を長期予測や減災研究でどう扱い、逆にA05班の観点から他の班に対してどのような要望が考えられるか明らかにし、問題点の解決を図っていく必要がある。
 長期予測については、いくつかの重要な火山を選択し、過去のデータの再検討に加え、必要な地質調査を実施し、より詳細な噴火史を構築し、噴出物の詳細な分析によるマグマ供給系を含むマグマシステムの変遷を引き続き解明する。このため、高速全自動火山噴出物分析装置の導入や、マグマ物質の早期判別手法の開発を行なう必要がある。
 減災の研究については、特に、過去の主要な災害の実態を現在の知識で分析し、多様な爆発現象による被災を軽減するために必用な核心的情報や、必用なツールの開発が求められる。特に、火山災害で最も重要な火砕流については、わが国では雲仙型の溶岩ドーム崩壊型火砕流のイメージが、マスメディアや住民ばかりか、一部の行政に至るまで強く定着しており、プリニー式噴火における火砕流という理解が極めて不十分である。
 また一方では、大規模でかつきわめて危険な噴火は、統計上確率としては高くないため、その危険性をどんな観測や研究によりどう評価し、どのように伝えればよいか、困難な課題になっている。過去の事例をこのような観点で解析し、どんな問題が共通してあるのか、シナリオを絞っていくためにどんな問題があったのかなどの十分な分析を試みる必要がある。
 以上のような研究を進めるためには、過去の重要な噴火事例における詳細な時系列データの構築や、映像データの収集整理、住民や行政或いは次世代を担う学生達などに対するアンケート調査、災害時の行動分析などを計画に基づいて進めると共に、確率的な長期予測からより決定論的な長期予測をめざした、マグマの進化過程の詳細な解析を行なう必要がある。
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