火山爆発のダイナミックス〔計画研究A05班〕:活動経緯
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 2003年度の活動経緯 
 中長期予測手法の研究を受け持つ中川班では、一昨年より導入を検討してきた、高速全自動火山噴出物分析装置(全自動蛍光X線分析装置)を9月に導入し、10月から全岩組成分析を精力的に行なっている。装置が導入されたことにより、全岩分析が大量にかつ迅速に可能となったことは本研究を進めることを可能にした。
 これにあわせて、2003年9月16-17日に、「火山噴火の中長期予測手法開発」メンバーと関係する協力研究者などによるグループ集会をもった。計画研究についての議論に続き、10名のメンバーが研究発表を行い、1日半の時間をかけて研究実施計画と研究成果公表の段取りになどについて討議を行なった。
 グループ研究会で議論となった対象火山としては、樽前山・駒ケ岳、蔵王、三宅島、ラバウルなどであり、年度末の研究会での発表や、国際誌に投稿中の研究成果となっている。
 中川他は、樽前火山が1500年間の活動休止期を挟んで1667年に噴火を再開してからの噴火活動を、成層マグマ溜りの形成とその進化に注目して、噴出物の詳細な組成分析から岩石学的な手法による中長期噴火予測の展望を得ることに挑戦した。
 研究協力者の吉本等は、今までの陸上における調査では解明されていなかった1640年の北海道駒ケ岳の山体崩壊物が、海底でどのように分布しており、崩壊物量はどの程度であったかについて、ソナーによる詳細な海底調査と、陸上での研究成果から明らかにしている。
 また、研究協力者の安間と中川は、三宅島の1983年までの過去約500年間の火山噴火を対象に、噴出物の鉱物組成や化学組成の詳細な分析手法により、浅い安山岩質のマグマと、深い玄武岩質マグマの二つのマグマ供給系による時間的な変遷によって、火山活動の推移が規定されていることを明らかにした。研究協力者の伴は、蔵王火山の最近3万年の火山活動について、同様な研究を実施した。
 火山のハザードマップに関する基礎研究では、山村悦夫は、研究協力者の押谷一とともに、有珠山噴火について虻田町でGISシステムを活用した面接型を取り入れたアンケート調査を実施した。
 また、小山眞人は、富士山の試作版ハザードマップについて、火山周辺の自治体の防災職員や住民を対象に、意識調査を実施するとともに、児童達がハザードマップをどのように理解するかという実態検証を行なった。
 過去の噴火危機対応の実態に関する研究としては、岡田弘は三松三朗の協力を得て、1910年有珠山噴火の詳細時系列データファイルの暫定版を完成させ、科学者や行政および住民行動に関する幾つかの興味ある事項についての解析を進めた。
 また、2000年有珠山噴火については、噴火までの5日間の詳しい基礎データファイルの作成が進められた。放映テレビのビデオクリップ化作業が完了し、科学的判断がどのように行政や住民に伝わったかの実態を解析できる、基礎資料が整ったことになる。
 また、噴火直後の現地対策本部や科学者グループの対応に関する放映テレビ放送のビデオクリップ化も開始された。気象庁が発表した火山情報についての解析も、噴火開始までの期間について完了した。
 2000年有珠山噴火時の、ヘリコプターによる観察データのうち、整理が進んでいなかった赤外熱映像については、2000年4月分のインデックス表示がデジタルファイル化された。宇井忠英は、教育現場で用いる火山災害の重要な動画映像についてのビデオクリップ作成作業を進めた。岡田他は2003年十勝沖地震がいったん静かになった有珠山の火口湖の熱活動を誘発したことを、現地調査と過去の熱映像などの蓄積資料から明らかにした。森済は、有珠山噴火後の熱エネルギーの見積もりを行なった。
 小山眞人は、9月に火山災害危機管理情報処理システムのための機器一式を導入し、必要なソフトウエアの開発に取り組んでいる。現在の段階では、基本データ掲示機能、大容量ファイル共有機能、A05班電子会議システム、およびA05班専用Webサーバーが使用できるように設計されており、A05班メンバー間の情報共有で一部実用に供している。成果は2004年度の学会で報告予定であり、実用に耐えるシステムが構築され、今後の火山噴火危機管理シュミレーションなどを実施できる素地が築かれたものと考える。
 火山災害危機管理については、ゲーミングシュミレーション手法を用いた解析が、共同研究者の中橋徹也や林信太郎他によって行なわれた。中橋は、危機管理の雛形の現状と課題について、過去の噴火の比較研究を行なった。また、吉川肇子は、2000年三宅島噴火について、火山噴火予知連絡会の議事録に基づき、集団浅慮などの災害心理学的な解析を行なった。
 共同研究者の鎌田浩樹は、火山防災啓発活動における科学者サイドで必要な考え方を実例に基づいて総括した。また、共同研究者の木下紀正等は、地上および人工衛星の画像解析による火山災害の実態把握手法について論じた。
 2003年度は、幾つかの国際会議に参加し、噴火の長期予測や災害軽減に関する交流を図った。主なものを以下に示す。
 (1) IUGG総会(7月、札幌)、メンバーによる研究発表は、岡田2件、宇井2件、小山6件、中川9件、森3件であり、研究協力者による発表も多かった。宇井・岡田・中川は、IUGGの野外巡検で北海道の火山(中川)および有珠山巡検(宇井・中川)を実施した。
 IUGGアウトリーチでは、岡田が「噴火メカニズムの解明と噴火災害の軽減に向けて」のテーマで普及講演を行なった。また、研究協力者の林信太郎が、千歳市内の小学校で児童たちと研究交流を図った。
 この機会を利用して7月3日に札幌で開催された「火山爆発のダイナミックス国際研究交流ワークショップ」には、岡田・森が参加した。
 (2) ハワイヒロ市における国際会議「火山の上の都市第3回」(7月).提出された論文は、宇井3件、岡田3件、森1件である。ハザードマップや、危機管理・土地利用および防災教育での議論が活発化していることが特徴だった。
 (3) つくば・富士吉田市における「火山災害軽減のための方策に関する国際ワークショップ」(9月).宇井および岡田が招待講演、小山他がポスター発表2件。また国際会議の最終日に実施された「国際講演会2003〜火山災害の軽減を探る」では、岡田が「有珠山噴火を振り返って」の講演を行なった。
 
 日本災害情報学会が、2003年10月18-19日に北大理学部で開催された。これは同学会創立5周年を記念して、初めて単独で、地方で開催された学会である。また、学会特別企画として10月17日に苫小牧市で、防災シンポジウム「樽前山の噴火と北海道太平洋岸の巨大地震・津波」が、10月20日には有珠現地防災視察研修会が開催された。本研究メンバーの内、災害軽減にかかわる数名が、4日間にわたるこの5周年特別企画に参加した。
 防災シンポジウムでは、岡田弘は、「今後想定される火山噴火と地震」のテーマの基調報告、宇井忠英はパネルでディスカッション「防災情報と災害に強い町づくり」のパネラーとして参加した。また、有珠山研修では、宇井忠英・岡田弘が現地案内をつとめた。
 この学会に引き続き、2003年10月21-22日に、有珠山山麓の虻田町でA05班会議を開催した。研究の進め方や研究成果のまとめ方などの議論とともに、8編の研究成果が発表され、2日目は規制区域立ち入りの許可を得た上で、変動や被害が大きかった火口域の現地調査を実施した。
 この他、国内で開催された、地球惑星合同大会(幕張、5月)、日本火山学会秋季大会(博多、10月)、などの定例大会での関連発表も多く行なわれている。
 2002年度の活動経緯 
 2002年度の研究の実施に当たり、8月になって実際の実施計画をメールなどにより検討し、本年度の研究協力者を、押谷(酪農大)、林(秋田大学)、中橋(東大工)、吉本(東大地震研)氏にお願いすることとし、研究分担や予算の配分を決め、研究が実施に移った。10月の火山学会に合わせて、会場で打ち合わせを行なうと共に、総括班会議でA05班の計画について説明などを行なった。また、火山学会で研究協力者含め、11件の関連した研究発表が行なわれた。11月の災害情報学会では、特別報告を含む3件の研究発表がなされた。
 12月11日には、北海道大学えんれいそう会議室においてA05班の班会議を開催し、協力者を含む各メンバーからそれぞれの今年度の研究計画、来年度以降の研究計画、特に経費が必要な計画の検討や協力体制のあり方などについて討議した。総括班から谷口氏が参加し、特にA01班からA04班までの各班との研究内容での連携をどのように追及していくかという課題が出され、今後の密接な研究連携のために、他の班との研究交流を今後積極的に図っていく必要を確認した。
 この班会議に合わせて、班会議の翌日の12月12日には、公開シンポジウムを学内の百年記念会館(午前の部)および学術交流会館(午後)を会場に開催した。メンバーによる研究発表は10件、それに続いて、「1977年有珠山噴火25周年記念特別企画」の特別公開シンポジウムを開催した。特別企画では、1977年の噴火当時最前線で活躍された勝井義雄北大名誉教授、当時札幌地方気象台におられた清野政明元気象研究所地震火山部長、および当時取材陣として勝井・横山・清野氏等の専門家と付き合った小池省二元朝日新聞編集委員に、火山災害の軽減における科学者の役割や、ハザードマップが地域で受入れられ活用されるまでに至った経緯についての、特別講演をお願いした。これらはテープで記録されており、映像と合わせて本研究の中で印刷までもって生きたいと考えている。
 1月8日の総括班会議では、12月までのA05班の取り組みと、今後の計画、特に減災研究では、平成15年度の予定されているIUGG札幌国際会議(7月)、ハワイの国際会議(7月)、及び北大を会場に予定されている災害情報学会(10月)を目標に、今年度からの研究成果の公表や、海外との連携のあり方などについての考えを報告した。また、3月3-4日の平成14年火山の爆発のダイナミクスシンポジウムでは、初日の午後にA05班の7名がそれぞれの分担課題について研究経過や今後の研究指針を中心に報告を行なった。
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