火山爆発のダイナミックス〔計画研究A05班〕:研究目標・計画
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 A05班の研究目標 
 火山噴火災害を軽減するためには噴火直前予測のための観測、火山噴火機構や火山爆発の地表現象を理解することが必要であり、それは本特定領域のA01-04での研究目的である。しかしながら火山噴火が避けられない以上、火山災害の軽減には長期的視野に立ち火山災害を前提とする都市計画・社会資本の整備が必要である。そのためには、長期的噴火予測手法を確立し、それに基づいた災害予測を行うことが不可欠である。また実際の噴火の際には、危機管理システムの有無が多方面での減災に結びつく。これらの長期的な噴火災害軽減のための一連のスキームに関して、火山学を主体とする学際的研究を展開するのが本計画研究である。
 上記のスキームの根幹をなす噴火の長期予測については、過去の噴火履歴から将来の噴火時期と規模を推定するという、経験的手法によっているのが現状である。その原因としては、噴火履歴がマグマ供給系の変遷を反映しているにもかかわらず、活動・噴火の将来予測をにらんだマグマ供給系の変遷に関する研究がほとんどないことが挙げられる。そのため演繹的な中〜長期予測ができず、ハザードマップも単に過去の噴火実績図であるのが現状である。さらに2000年の有珠山や三宅島の2つの噴火でも明らかになったように、噴火直前の予測については成功したものの、その後の避難や噴火の際の危機管理システムについては、いまだ問題が山積みしており、早急な確立が必要である。
 本研究計画では、いくつかの活動的火山に対して、地質学的、岩石学的手法により噴火履歴を編み、過去の噴出物を解析して、火山深部から浅部へのマグマ供給の頻度・プロセス・浅部貯蔵システムでのマグマプロセスおよび噴火のトリガーと上昇プロセスの長期間の変遷を解明する。それにより火山直下でのマグマ系の現状が判明し、将来の中〜長期の活動予測が可能となる。さらに、現状のハザードマップの問題点を洗い出し、地理情報システム(GIS)によるマップを開発する。これを基に危機管理システムの開発に際し、過去の事例の問題点を洗い出し、必要な用語・知識のデータベースを作成し、シミュレーションを通じ普遍的かつ実用的な情報発信・伝達のための知見・手法・ツールを得ることを目的とする。
 2004年度のA05班の研究目標と研究計画 
 本研究の目的は、中長期的火山噴火予測手法の確立を目指し、それに基づき、爆発を伴う噴火災害の予測手法、中でも減災のための土地利用・都市計画・社会資本整備まで視野に入れた噴火時における危機管理システムの構築を提言することを目的とした科学的基礎研究をすすめることである。
 長期的噴火予測の確立のため、いくつかの爆発的大噴火を繰り返す活動的火山において、過去の噴出物を解析して、詳細な噴火履歴を編み、火山深部から浅部へのマグマ供給の頻度・プロセス、浅部貯蔵システム内のマグマの挙動及び噴火のトリガーとマグマの上昇プロセスの長期的変遷を解明する。これに付随して、噴火堆積物からの迅速なマグマ物質検知手法の開発をも目指す。
 また、これらの科学的手法により得られた長期予測と、歴史時代における世界中の主要噴火危機・災害事例の文献資料の収集および、経験者への聞き取り調査等の実施により、詳細な時系列解析に基づき噴火災害予測を行う。その成果を用いて、危機管理における問題点を洗い出し、危機管理のシミュレーションを行う。その結果を基にして、噴火時の危機管理システムを、自然科学系の研究者だけでなく、他分野の研究者、行政官やジャーナリスト等の協力も得て、学際的体制で構築することを目指す。

 本計画研究では大きく分けて、中〜長期噴火予測手法に関する基礎研究と、それに基づく災害予測手法および噴火時の危機管理システム構築を目的として、下記の具体的研究項目とそれらの担当者を予定している。
1.詳細噴火履歴に基づくマグマ供給系の時間変遷の研究とそれを用いた中〜長期噴火予測手法の開発(中川)
2.火山災害の多様性とそれらに対する統合的減災手法に関する研究(岡田・山田・森)
3.災害予測図(ハザードマップ)作成手法の開発(山村)
4.火山災害時における危機管理に関する研究(小山・吉川)
5.以上の研究項目を総合して、これまでの火山と共生する手法を科学的に示す(全員)。
 本研究で導入する分析機器は、主として上記の1及び2に研究項目で使用するものである。それ以外としては上記2・4の研究のためにデータベース・グループウェアのための計算機システムを導入する。
 本年度は、各班員が、引き続き研究を実施するが、平成15年度末に退官する、宇井(北海道大学教授)に代わり新たに山田(北海道大学助教授)が加わり、岡田(北海道大学教授)と協力して研究を進める。1に関しては、高速全自動火山噴出物分析装置の本格運用を行い、噴火年代毎の噴出量、噴火様式、マグマ化学組成の変化、マグマ混合の有無とその詳細なメカニズム等について大量のデータを蓄積し、平成15年度に引き続きいくつかの火山における詳細な噴火履歴を山体近傍のテフラ層序により確立する。また、マグマプロセス解析装置を導入・改良して、マグマ相互作用、マグマ−壁岩相互作用、噴火にいたる原因解明と時間スケールなどを解析し、それらを時系列で遡り、マグマ供給系の時間変遷を明らかにしてゆく。2については、平成15年度に引き続き、火山災害の多様性について海外火山の実地調査を行いデータを収集するとともに、国内のデータとあわせて、火山活動・噴火前兆現象データベースの構築に着手する。3では、平成15年度に収集されたデータ解析結果に基づき、有珠山において地理情報システム(GIS)を用いて、火砕流、火砕サージ、降灰区域住民のハザードマップ利用度の差異を明らかにする。4については、平成15年度に導入した火山災害危機管理情報処理システムの本格運用に入るとともに、事例収集を進めシステムの充実を図り、情報伝達・災害対応シミュレーションを行う。さらに、知識ベース・グループウェア開発システムを構築する。5.については、領域全体で開かれるシンポジウムに参加して、研究成果を発表する。
 2003年度のA05班の研究目標と研究計画 
 火山学に社会が期待する点は、噴火予測と災害軽減に帰結する。もちろん、基礎的な個々の知見を更に深く発展させ学術的成果を深めることは重要である。火山やその周辺で発生している自然現象を的確に理解し、人命および社会資本の損失をできるだけ軽減するためには、個々の科学者が自分の得意とする個別の学術分野だけに閉じこもり、独立に先鋭の成果を獲得するだけに終わらせるだけではすまされない。
 学問の基礎体系と学問成果のどこがどのように社会で活用できるのか、科学や科学者者たちにとってどのような問題があるのか、当面解決すべき重要課題はどこにあるのか、社会との関係についても科学者側から基礎科学として取り組まなければならない研究面も重要となる。
 火山噴火が爆発的で規模が大きくなると、社会に与える影響は一般により甚大となる。火砕流や火砕サージ、或いはそれに伴って生ずる火山泥流や山体崩壊などの破壊的な流動現象は、普段なら離れていて安全だと考えているような都市域まで、計り知れない影響を及ぼすことがある。
 このため、本特定領域研究では、「火山爆発のダイナミックス」の基礎研究を組織的・計画的に発展させることを最重要と考え、5つの班で課題を分担して2002年度より総合研究を進めている。
 この中で、A01-A04班では、それぞれ最も基礎的な、観測による爆発場の理解、爆発準備過程、爆発のメカニズム、更に爆発現象の定量化によるリアルタイム災害予測などのテーマに取り組んでいる。
 A05班では、これらA01〜A04班の研究成果と密接な連携を図りながら、火山噴火の長期予測と、災害軽減のための基礎科学の諸問題をテーマに、過去2年間共同研究を進めてきた。
 現在起こりつつある火山現象を観測で捉え、火山活動を診断して、いくつかのストーリーを検討するいわゆる短期予測や、緊迫時の災害対策や危機管理支援については、20世紀の最後の4半世紀になってからは、内外で幾つかの特筆すべき成果が得られるようになってきている。
 しかしながら、中・長期の噴火予測については、噴火史や、マグマと噴火場の環境などから経験的に推定する予測に留まっており、一層の学問的な解明が必要になっていた。
 A05班では、幾つかの特定の火山を選び、詳細な過去の噴出物や噴火履歴を編纂し、火山深部から火山浅部へのマグマ供給系や、浅部マグマ貯留システム内でのマグマの挙動を明らかにすることを目的にしている。また、最終的に噴火をトリガーするメカニズムや、マグマ上昇機構の長期的変遷の解明から、マグマシステムの時間的発展過程の中で中・長期噴火予測を位置づける新しい試みに取り組んでいる。
 平成15年度は、高速全自動火山噴出物分析装置がいよいよ導入され、膨大な資料の迅速な全岩化学分析が可能になり、この分野の研究で大いに進展があった。
 火山災害軽減のための基礎科学については、火山災害予測図の作成及び評価手法の開発、火山災害時の情報活用及び危機管理に関する研究、将来における多様な火山災害を軽減する支援データファイルの作成と活用指針、次世代に対する火山災害軽減文化の創造などが、主なテーマとなった。
 幾つかの国際会議を通じて、災害軽減に関する科学者間の諸経験の交流が活発に行なわれた。ハザードマップや危機管理、土地利用や防災教育などで、人口過密地帯の火山国であるわが国の長年の役割や当面する責務を痛感する機会となった。
 2002年度のA05班の研究目標と研究計画 
 噴火時の直前予知や危機対策に加えて、中〜長期的火山噴火予知手法を確立することは、災害に強い町づくりや社会資本整備の指針作成の上で、極めて重要な課題である。このような平常時における時間をかけて整備する基盤整備は、非常時においての減災対策の基礎になるからである。
 長期的な噴火予測手法の確立のためには、幾つかの重要な特定の火山を選択して、過去の噴出物や、詳細な噴火履歴を編纂し、火山深部から浅部へのマグマ供給プロセスや、浅部貯留システム内でのマグマの挙動を明らかにすると共に、噴火に転ずるトリガーやマグマ上昇機構の長期的変遷を解明することが必要である。またこの研究の副産物として、噴出物から迅速にマグマ物質を検出する手法の開発も可能となる。
 また、火山災害軽減のための基礎科学としては、次の噴火危機においてどのような科学的支援が必要であり、可能であるかが、研究課題の出発点になる。この目的のためには、日本及び世界のいくつかの主要な火山噴火危機・減災研究の総合的な事例研究を行なう必要がある。従来は、文献検索が主な手法であったが、本研究においては実際の噴火危機に長年携わったメンバーも多く、また心理学や危機管理、防災科学の専門のメンバーの協力も得ているので、経験者への聞き取り調査や、分散しており今まとめなければ逸散してしまいかねない映像資料やフィールドメモなどを基に、減災科学に必要な時系列データを編纂し、多角的な観点から解析と評価を行い、提言をまとめることが必要である。このような基礎資料の整理・解析に基づき、危機管理における問題点を洗い出すと共に、危機管理のシミュレーションを行なう。
 この研究で得られた成果を基に、理学・工学系の研究者だけでなく、広く他分野の研究者や過去の危機対策を直接担当した行政やマスメディアの方々と、学際的な公開研究会を開催し、火山危機支援科学のあるべき姿を追及する。
 2002年度の研究計画として、長期予測の分野では、岩石学的・地球化学的データの整理と現地調査による追加資料の解析、主な火山における噴火履歴の再検討、有珠山などの噴出物でマグマ物質検出法の検討、高速全自動火山噴出物分析装置導入のための実験室準備などを行なうこととした。
 また、災害軽減科学の基礎となる、火山噴火の危機と減災データベースの構築手法の検討と、素材の収集・整理・分析を行なう。火山のハザードマップの問題点検討をフィールド調査を踏まえて実施する。世界の主な噴火危機・災害情報について、災害情報伝達上の比較研究、更に災害情報専用サーバー立ち上げのための準備作業を行なう。
Since Nov.25,2003